【かしわチャレンジストーリーズ #1】荒井大輔

柏ではいま、多くの“挑戦”が生まれています。その一歩一歩が、人を動かし、街を動かし、未来を変えていく力になっていく。かしわチャレンジストーリーズは、そんな“挑戦の連鎖”を取材し、記録した企画です。柏で挑戦を続けるアスリートや企業の声を、全5回のインタビューシリーズとしてお届けします。

できない理由を探すより、できる理由を探そう

三井不動産全日本選抜車いすテニスマスターズ2022・2023・2024と、3年連続男子シングルスの優勝者である荒井大輔さん。2023年には一つの目標だった世界ランキングトップ10入りを果たしています。今も素晴らしい記録を更新し続ける荒井選手ですが、実は小学生時代は体育の授業や運動会が嫌いなお子さんだったのだそう。

テニスは人生初の挑戦だった


  「中学生になって、友人の誘いで軟式テニス部に入部したところ、思ったよりも上手くできまして。大勢いる部員の中から上級生の試合に出ることもあり、コートの上では平等で、義足であることも関係なく〝自分の力〟を評価してもらえる。対戦相手も対等に戦ってくれる。それらが自信につながり、テニスのおかげで義足を見せることに対して抵抗がなくなりました」

 小さい頃からずっと義足を使っていた荒井選手は、運動神経は良かったのでむしろ運動は嫌いでははなかったと言います。

  「公園で友達と遊ぶとか、ドッジボールも好きでした。ただ、運動会で義足を見る人の目が気になったり、特別に扱われたりすることが嫌だったんですね。だからテニス部に入るということは僕の人生初の『挑戦』だったと思います」

戸惑いから挑戦へ。車いすテニスとの出会い


 中・高・大学と軟式テニスを続けてきた荒井選手。大学を卒業して1年間のワーキングホリデーからの帰国後は岐阜の福祉機器メーカーの営業マンとして働いていました。ある時、仕事の現場で出会った車いすテニス日本代表の諸石光照選手から『車いすテニスを一緒にやらないか』と誘われたのです。ただ、普段の生活で車椅子を使ったことがなく、自分が障がい者という意識も持っていなかったため、その提案にかなり戸惑いましたが、荒井選手はここでも「挑戦」します。

  「僕は義足だけどテニスができた、それで人生が変わったので、義足や義手の開発をしてモノ作りで貢献したい、何か人に伝えられるような仕事をしたい、という目標がありました。今でも根本にその思いがあって、それが車いすテニスに変わったというところです。一流のアスリートという立場から伝えると、人に与える影響力は大きい。だったら僕自身がアスリートになろうと考えました」

「テニス以外にもやりたいことはたくさんあります。最近だと宇宙飛行士ですかね。コロナ禍の時はCIAの募集が気になってました。基本的に新しいこと好きで熱しやすく冷めやすい性格なんですが、テニスと妻を大事にすることだけは変わらずずっと続いています(笑)」。

〝できるかもしれない〟が人生を変える


 実際に車いすテニスの世界に入ってからは、世界に出て行った時に壁の高さを感じたそうです。

  「最初の海外遠征で銀メダリストと対戦して1ゲーム取れたんです。それでもしかしたら自分はいけるかもしれないって、急に世界が開けた気がして…会社を辞めて車いすテニス一本でいくと妻に言ったんですが、当然反対されますよね」

 スポンサーのあてもなく、収入もなくなる中での決断に、家族も最初は猛反対でした。

  「でも〝今辞めなかったら後悔する〟という気持ちが勝ち、上司に退職メールを送る〝送信ボタン〟を妻に押してもらったんです。これもなかなか大きな挑戦でしたね」

 プロ転向後、驚くほどのスピードでランキングを上げ、わずか2年で世界40位台に。

  「強い選手たちと切磋琢磨できるTTCに来たことで、考え方も変わりました。ここで練習してきた選手のほとんどが代表に名を連ねている。まさに〝挑戦の場〟なんです」

 今、荒井選手は、TTCで一緒にプレーする若い世代にも目を向けています。

  「僕自身もまだ壁の途中。だけど、僕が挑戦している姿を見て〝自分もできるかもしれない〟と思ってもらえたら。〝できない理由を探すよりも、できる理由を探す〟その方がずっと前に進めます。まずはどうすればできるか考えて、一歩踏み出してもらえたら嬉しいです!」

【プロフィール】
東京都出身/BNPパリバ所属
先天性脛骨欠損の障がいを右足に持ち、2歳から義足での生活を送る。中学時代に義足で軟式テニスを始め、中学、高専の部活では部長を務める。高専から大学に編入して人間工学を学び、卒業後、1年間ワーキングホリデーで渡豪。福祉機器メーカーの営業マン時代に車いすテニスに出会う
□ 2017年BNPパリバ所属として海外転戦を開始
□ 2019年スロバキアオープン・台北オープンでシングルス優勝など、計6つの大会でシングルス優勝を果たし世界ランキングが飛躍
□ 2021年東京大会代表に選出
□ 2023年グランドスラム全豪オープン・全仏オープン初出場

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