【かしわチャレンジストーリーズ #2】井上由惟子

柏ではいま、多くの“挑戦”が生まれています。その一歩一歩が、人を動かし、街を動かし、未来を変えていく力になっていく。かしわチャレンジストーリーズは、そんな“挑戦の連鎖”を取材し、記録した企画です。柏で挑戦を続けるアスリートや企業の声を、全5回のインタビューシリーズとしてお届けします。

スポーツの力で誰もが自分らしく生きられる世の中に

 KOIL(柏の葉オープンイノベーションラボ)を拠点に活動する「一般社団法人 S.C.P. Japan」代表の井上由惟子さんは、かつて、なでしこリーグ(日本女子サッカーリーグ)でプレーした元アスリート。今は現役時代とは違うフィールドで〝スポーツの力〟を社会の変化につなげる挑戦を続けています。

楽しかった幼少期のサッカー


 お兄さんの影響でサッカーを好きになり、近所の男の子たちと一緒にボールを追いかけていた井上さん。そのプレーを褒められることも多く、サッカーがどんどん楽しくなって続けてきました。
「柏の少年サッカーチームに通っていたのですが、中学2年生ごろから男子との体格差から試合に出る機会が無くなってきました。そのタイミングで、まだ少なかったレディースチーム(ジェフユナイテッド市原・千葉レディース)の存在を教えてもらい、通い始めました。当時ジェフには下部組織が無かったのですが、トップチームに混ざって練習していたため、レベルの高いプレーを間近で見ることができたのは良かったですね」

プロリーグでの活躍から世界へ


 2006年からジェフユナイテッド市原・千葉レディーストップチームでプレー。その後、若手世代の日本女子代表に選出され、世界大会での経験を積みました。21歳で選手生活を終え、2年間JICA海外協力隊へ。
「帰国してからは日本サッカー協会で社会貢献事業のお仕事をしたことから、その分野をもっと体系的に学ぶため大学院に入学しました。院生の間にFCバルセロナ財団が日本で行うダイバーシティインクルージョンのプロジェクトに係わらせていただいたことが、今の仕事に繋がっています」

ジェフユナイテッド市原・千葉レディース時代の井上さん(左)。「女子のジュニアチームも今は環境が良くなっていて、U-15や17、18などのユース年代のチームも徐々に増えてきています。ただ、それは一部のプロを目指す子向けのパスであって、サッカーを純粋に楽しみたい女子向けの受け皿はまだ足りていません」

誰もが自分らしく生きられるインクルーシブな社会の実現に向けて


 2020年に立ち上げたS.C.P. Japanは、スポーツを通じて、誰もが自分らしく生きられるインクルーシブな社会にするための活動をしています。
「スポーツ界自体まだまだ課題がたくさんあります。例えば不平等な構造や、暴力暴言、安心安全ではない環境、女性や障がいのある方、マイノリティの方などにとって、インクルーシブではない環境です。まずはスポーツ自体を誰に対しても開けたものに変えていく。それがモデルとなって社会をも変えることができると信じています」
 S.C.P. Japanの活動は、子どもや若者のスポーツの機会作りとして、スポーツ教室の開催や障がいのある女の子のスポーツチーム運営。また、こういったマインドを様々なスポーツ団体や指導者の方々に広げるために、研修や勉強会などを企画・開催しています。
「この事業そのものはアスリートだった自分が経験してきたことが元になっています。もっと言えば、幼少期の経験も実はずっと地続きでつながっていて、女子だからという理由でできないことがあったり、いじめられたり、社会の中で何か自分が当てはまらない環境があるということを経験の中で感じてきました。そういった不平等をなくしたいという思いが今の活動の根幹となっているのです」

障がいのある子どもや女の子など、スポーツにアクセスしにくい子どもたちを対象にしたスポーツ教室を開催しています。また、障がいの有無や性別に関わらず、誰もが一緒に楽しめるインクルーシブな教室も実施。多様な形で「スポーツと学びの機会」を届けています。

同じ目標を持つ仲間を増やしたい


 今、井上さんは、思いの共感ができる仲間と一緒に目指す社会の変革に向けて、チャレンジできる環境にやりがいを感じています。今後は地域の方々との連携をより深めながら活動していきたいと語ります。
「〝これをやりたいかもしれない〟〝これが好きかもしれない〟という自分の心が少しでも動くことがあるのなら、そこに一歩踏み出すことを大事にしてほしいです。結果的に自分を大事にすることになると思うので。私はそれがわからなくなった時期を経験してやっと今、自分らしさを取り戻せたと感じています」
 社会を変えるために、同じ思いや目標を持った仲間を増やすこと。これが次の井上さんの挑戦です。

S.C.P. Japanの拠点となっている「KOIL(柏の葉オープンイノベーションラボ)」。柏の葉スマートシティのテーマの一つ、「新産業創造」の一角を担うところとして、起業家やクリエイターなどが会員となっている、ビジネスコミュニティの拠点です。井上さんが普段、オフィスとして利用しているのは、6階にある会員制コワーキングスペース「KOILパーク」です。

【プロフィール】
□ 2006年からジェフユナイテッド市原・千葉レディース(なでしこリーグ)でプレー
□ 2007年U-16日本女子代表AFC準優勝  □ 2008年FIFA U-17女子W杯出場
□ 2009年AFC U-19女子選手権優勝に貢献
□ 2012年アメリカ・ニューヨークマジックでのシーズンを経て、21歳で現役を引退
□ JICA海外協力隊としてブータンで2年間体育教員
□ 2017年日本サッカー協会(JFAこころのプロジェクト)に勤務
□ 2019〜2022年FCバルセロナ財団「ForAllCapabilities」プロジェクトMethodological Coordinatorを務める
□ 2020年2月に「一般社団法人 S.C.P. Japan」設立
□ 2023年筑波大学大学院にてスポーツ国際開発学の修士号を取得。スポーツを通じたダイバーシティ&インクルージョンの推進を、自身のライフワークとして取り組んでいる
□ 2025年JFAリスペクトアウォーズ2025にて、「女子パラフットボールフェスタ」の取り組みが、特別賞(インクルーシブ賞)を受賞

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