柏ではいま、多くの“挑戦”が生まれています。その一歩一歩が、人を動かし、街を動かし、未来を変えていく力になっていく。かしわチャレンジストーリーズは、そんな“挑戦の連鎖”を取材し、記録した企画です。柏で挑戦を続けるアスリートや企業の声を、全5回のインタビューシリーズとしてお届けします。

ボクシングも人生にも裏技はない
日立台のスタジアム近くで「ふなどら商店」というカレー店を営む船井龍一さん。かつて日本とアジアの2つのタイトルを手にし、世界の舞台にも立った元プロボクサーです。引退後は料理の道に進み、今もなお「挑戦」という言葉を胸に歩みを続けています。
自分自身を変えるためボクシングの世界に
東京都大田区生まれ。ボクシングの世界に興味を持ったのは高校時代に見たテレビ番組がきっかけとのこと。
「それまではボクシングとプロレスの違いすら知らなかったのですが、ボクシングって怖いと思いつつも、かっこいいという気持ちが勝って…。当時部活はバスケットボール部でしたが、消極的な性格だったので、補欠の補欠みたいな目立たない存在でした。でも、ボクシングだったら自分を変えられるかもしれないと思ったんです」
ボクシングをしている高校の友人から地元のジムを教えてもらい、見学後に即入会。それが船井さんのボクシング人生の始まりでした。その後、その友人と一緒に高校でボクシング部を立ち上げ、アマチュアの試合に出場。地道にキャリアを積んでいきましたが、卒業後は一般企業に就職。しかし、そこで「俺、これで人生を終えるのかな」という思いがよぎりました。
子どもの頃から料理も好きだった船井さんは就職先を退職し、調理師専門学校への進学を決めます。同時にボクシングもプロデビュー戦に挑むことに。
「実はその一戦でボクシングはやめるつもりでした。でも、それまでポンコツ野郎だった僕がパンチだけの勝負で勝ち上がったのを見た仲間が〝すごい!〟って言ってくれて気持ちよくなっちゃって、やっぱボクサーになるわ!と。でも1年間ボクシングは中断して学校の勉強に集中しました」

チャンピオンになった時の船井さん。
忘れられないタイトルマッチ
調理師専門学校を卒業してボクシングに復帰した船井さんは快進撃の末、10年後の2017年には第39代日本スーパーフライ級王者となります。
「このタイトルマッチは人生で一番忘れられない瞬間です。実はこの時の対戦相手は僕とボクシング部を一緒に作った親友でした。これまでの試合の中で、自分の優しさゆえに負けてしまった場面があって、そんな時に決まった親友との対決でした。ここで殻を破れば自分は本当に強くなれるんじゃないかという思いも込めての勝利でもありました」
そこからトントン拍子に防衛して、次の年にはWBOアジアパシフィックスーパーフライ級王座を勝ち取り、さらなる上を目指して船井さんは2019年、世界に挑戦しました。
「IBF世界スーパーフライ級王座に挑戦した米国・カリフォルニアのアリーナは、未だかつてなく華やかな会場でした。結果、負けてしまいましたが、自分の中では達成感に満ちていて、もうこれ以上はないなって。そこでボクシングをすっぱりやめました」
もう一つの夢を叶えた引退後の挑戦
引退後、船井さんはもう一つの夢だった料理の世界に挑戦しました。現役時代から作り続けていたカレーをキッチンカーで販売し、2023年には柏に「ふなどら商店」を出店。
「開店当初は本当にお客さんが来ませんでした。でも、自分を信じて作り続けてきたら常連さんが増えて、今年、カシワカレーグランプリで優勝できました。結果を知って妻とハイタッチするほど嬉しかったですね」
ボクサーだったころのマインドはカレー屋を営む上で活かされているのだそう。
「ボクシングには裏技はなくて、同じことを繰り返して身につけることでしか強くなれいんです。カレーを作る時も、毎日毎日コツコツと自分の作ったふなどらカレーを崩さず、なおかつアップデートしていくことが大事だと思って。なかなかお客さんに来てもらえなかった時も、ひたすら作り続けていました」
「僕ボクシングを18年やってたんですよ。最初はきつい練習も嫌だったけど、だんだんと応援してる方々に喜んでもらえたりとか、もっと自分の名を残したいとか、そういう願望も増えてきて練習にも耐えられるようになっていました。それはボクシングが好きだったからだと思います。今思えば1日1日楽しんで、ずっと青春してたような感じです。なので今のカレー屋もそういう気持ちを忘れずに続けていきたいと思います」
リングを降りてもなお、船井さんの挑戦は続いています。


東京都大田区出身
□ 2017年日本スーパーフライ級王者の中川健太と対戦。7回2分59秒KO勝ちし王座を獲得。第39代日本スーパーフライ級王者
□ 2018年ワルリト・パレナスとWBOアジアパシフィックスーパーフライ級王座決定戦で対戦。8回2分55秒KO勝ちを収め王座を獲得
□ 2018年IBFスーパーフライ級7位のビクター・エマニュエル・オリボとIBF世界スーパーフライ級挑戦者決定戦。2回2分9秒TKO勝ち、王座の挑戦権を獲得
□2019年カリフォルニア州ストックトンのストックトン・アリーナにて、IBF世界スーパーフライ級王座のヘルウィン・アンカハスに挑戦。7回1秒ドクターストップによるTKO負け。試合中継は48万人が視聴。現役引退
□ 2023年柏市に「ふなどら商店」を出店